バビンスキー反射はなぜ起きる?

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画像出典:ジョゼフ・ババンスキー – Wikipedia

バビンスキー反射はフランスの医学者バビンスキーが1896年に論文にまとめて発表した反射です。

写真の紳士がバビンスキーさんです。

1857年に生まれポーランドに生まれて両親とともにフランスへ移住します。顔を見れば分かるように、自他ともに厳しく無骨な方で生涯独身として過ごされ1932年に亡くなりました。

記録によると、とても職人気質だったようで黙々と数時間も診療を続けたとか、いい加減なことはいう人を決し許さず攻撃したとか、普段は寡黙なのに新しい発見には後輩でも飛びついて賞賛したとか言われています。

ちなみに日本ではバビンスキーで広まっていますがフランス語風にババンスキーと呼ぶこともあります。

バビンスキー反射の発見

発見したキッカケですが、お弟子さんが残した記録によるとバビンスキーさんはベッドで寝ている患者さんの足を挨拶代わりに順番にこちょこちょと引っ掻いて回っていました。

すると大半の人が母趾を屈曲させるのに対して、なかには伸展させる人がいるのを発見したのです。

、、、、、

バビンスキーさん挨拶代わりに何やってんだよ!

100年前と現代の医療倫理感の温度差を感じますねー。

28行の名文

この発表された論文は28行の短いものでこれ以上削ることのできない無駄のない名文とされています。

以下は岩田誠先生が訳された全文を引用させて頂きました。

「中枢神経系をおかすいくつかの器質性疾患における足底皮膚反射について」

   J.ババンスキー(1896年2月22日開催の生物学会報告より)

私は,中枢神経系の器質性疾患による片麻痺あるいは下肢単麻痺を呈するかなりの数の患者において,足底皮膚反射の異常を観察したので,ここにそれにつき簡単に述べる。

足底を針でつつくと,麻痺のない側では,正常者で通常見られるのと同じように,骨盤に対する大腿の屈曲,大腿に対する下腿の屈曲,下腿に対する足の屈曲,そして中足骨に対する足趾の屈曲が誘発される。麻痺側では,同様の刺激によって,骨盤に対する大腿の屈曲,大腿に対する下腿の屈曲,そして下腿の対する足の屈曲が生ずるが,足趾は,屈曲する代わりに中足骨に対する伸展運動を生じる。

このような足底皮膚反射の異常は,発症後数日しか経っていない新鮮な片麻痺症例でも,数か月を経た痙性片麻痺の症例でも,同じように観察された。このような異常は,随意的には足趾を動かすことのできない患者でも,また,足趾の随意運動が未だ可能な患者でも,確認することができた。しかし,このような異常は,いつも見られるというわけではないことをつけ加えておかねばならない。

足底を針でつついたときに生じる足趾の伸展運動は,脊髄の器質性病変による何人かの対麻痺症例においても観察された。しかし,このような症例においては,比較対照部位がないため,異常の実態はあまり著明ではない。
要約すると,足底の針刺激によって生じる反射運動は,中枢神経系の器質性疾患によると思われるような下肢の麻痺においては,すでに知られているように,反射の強さが変化するだけでなく,反射の形態も異常となるのである。    (訳:岩田誠)

なぜ起るのか?

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画像出典:バビンスキー反射 – Wikipedia

このように報告されたバビンスキー反射ですが評価方法と現象は広く知られていますがなぜ起きるのでしょうか?

できれば生理学的な説明が欲しいところです。

そこで探しているとバビンスキー反射について報告している豊倉康夫先生の文献に行き着きました。

豊倉先生は昭和39年に東大教授になられておりSMONの病因発見、「神経内科」という言葉を作ったなど現在の医学に大きく貢献された先生です。

バビンスキー反射の豊倉先生の解説

バビンスキー反射の出現に関しては多くの議論がなされてきました。

一般的には多シナプス性の表在反射に分類され、侵害刺激に対する下肢屈曲反射の一部が出現しているとされています。

注目すべきは底屈筋群と背屈筋群の力関係です。

足底を刺激をすると場所や強さにで変化しますが両筋群に刺激が入ります。

ここで健常者では底屈筋群の方が強く収縮をしますが、錐体路障害のある患者さんでは背屈筋群の閾値が著名に低くなっており母趾が伸展してしまうのです。これは筋電図研究から明らかにされています。

ではなぜ通常は底屈筋群が有意なっているのでしょうか?

これは豊倉先生の進化から見た仮説に分かりやすく説明されています。

以下は引用です。

豊倉康夫,神経学の立場より-バビンスキー反射を例に-,脳と発達10(3),pp.186-187,1978.

この解釈として、足ゆびの背屈筋群の発達史的な見方と二足直立歩行を獲得したヒトの人類生物学的な考察が重要であると考えている。

乳幼児から処女歩行を経て成人の直立歩行に至る過程で、乳幼児には備わっていない足ゆびの蹴り出し(底屈)運動は益々強化されることとなる。

また、二足直立によって体重を支えるようになった足においては、足ゆびの運動性、可動性は著しく制限され、底屈と背屈以外の運動性はほとんど犠牲にされる。

このことは上肢の手指の顕著な可動性と対照的である.

すなわち、成人における、足ゆびの底屈筋群の強化は、個体生的にも系統発生的にも重要な発達過程とみなすべきであろう。

このことによって、足底皮膚反射が正常成人においては底屈筋群優位の形をとるに至ったと考えられないであろうか。

また、バビンスキー反射が一部の類人猿を除けばヒトだけにしか見られない反射であり、ヒトにおいて上肢にはバビンスキー反射と相同な反射は存在しない という事実も、人類の二足直立歩行による上肢と下肢の著しい分化を無視して考えられないことであろう.

いかがでしょうか?全ての疑問に答えてくれるわけではありませんが大きなヒントを与えて下さっているように思います。

予想外のバビンスキー反射に出会った時には解釈の参考にしてみて下さいね。


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参考文献

豊倉康夫,神経学の立場より-バビンスキー反射を例に-,脳と発達10(3),pp.186-187,1978.

バビンスキー反射 – Wikipedia

ジョゼフ・ババンスキー – Wikipedia

日々不穏 » 豊倉康夫

日々不穏 » 神経学の源流1 ババンスキーとともに-

医学書院/週刊医学界 新聞ババンスキー徴候発見から100年 神経学と「観察」

札幌山の上病院:豊倉記念講堂

豊倉康夫(とよくら やすお)とは – コトバンク


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理学療法士

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