片麻痺の肩の亜脱臼の装具適応

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脱臼

画像出典:脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について

片麻痺の肩の亜脱臼は一般的に肩峰下に1横指以上の間隙があることで評価されます。割合としては片麻痺患者全体の30〜50%に確認できると報告されています。

原因は肩甲帯周囲に影響する種々の問題です。下に思いつくものを4つあげてみました。

片麻痺の肩装具のポイント


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棘上筋を中心とした腱板の機能不全

カフ

関節包は動作時に挟み込まれないように棘上筋などのローテーター・カフによって外に牽引されピンと張られていますが、運動麻痺を起こすこと関節内が陰圧となり肩甲上腕関節の運動時に中に吸い込まれインピンジメントを起こしてしまいます。

大胸筋や上腕二頭筋の過緊張による前方への牽引

大胸筋や上腕二頭筋が上肢の病的共同運動パターンで緊張が高まることで骨頭の前方牽引を起こします。これに腱板の低緊張が重なれば前下方に骨頭が偏位することになります。

関節包など軟部組織の持続的牽引による不可逆の変化

また持続的な牽引状態は靭帯や関節包にクリープ現象(持続的な牽引で組織が伸びる)を起こしてしまい、変性のきっかけとなります。

肩甲骨の下方回旋

僧帽筋の低緊張や胸椎の後湾増強は肩甲骨を下方回旋させ関節窩を下向きに回旋させてしまいます。すると骨頭を引っ掛けて骨性に安定させることが難しくなります。

よく言われるのがここに上げた4つだと思います。

機能再建が出来る場合は良いですが再建するまでの期間や代行手段として装具による補助が必要となってきます。

なので次は装具の適応について考えます。

肩の保護は必要?不必要? スリングや三角巾の必要性

亜脱臼に対して装具を付けるのか、付けないのかは昔からよく議論されてきていると思います。

  • 低緊張で亜脱臼を伴う肩を乱暴に扱うことで耐え難い痛みが起こってしまため装具で保護するべき。
  • しかし上肢の分離運動を考えると屈曲、内転、内旋で固める三角巾などは分離運動の学習が阻害される。

両方とも間違っていないと思うのですが、肩関節保護と麻痺の回復にどう折り合いを付けましょうか?

ここで亜脱臼に対する評価が必要で、一つの判断基準にブルンストロームステージがあります。

田中ら(1989)の脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼-X千評価と姿勢の及ぼす影響についてに上肢のブルンストロームステージを使った評価が記載してあったので転載します。

(1)stage I: 亜脱臼の有無にかかわらず, 三角布を使用する.

(2)stage II~III: 除外項目に該当する場合を除き, 亜脱臼があれば三角布を使用する.

<除外項目>

a) 立位, 歩行により亜脱臼が整復される場合

b) 日常の上肢使用により亜脱臼が整復される場合

c) 肩周囲筋の筋緊張が十分であり, 亜脱臼は進行しない と考えられる場合

d) 三角布使用により拘縮が悪化 する恐れのある場合

 

(3)stage IV~VI: 亜脱臼の有無にかかわらず, 三角布 は使用しない. ただし, 以下の項目に該当する場合は使用てもよい.

<除外項 目>

a) すでに高度の亜脱臼があり, 亜脱臼の悪化や二次的損傷を生じる恐れがある場合

b) 三角布がないと, 歩行時に痛みを生じる場合

c) 三角布がないと, 歩行時にバランスを取りにくい場合

ステージⅡ〜Ⅲを境に肩関節保護の必要性を述べており、ステージⅡの一部とステージⅢの症例には三角巾の使用中止できる場合が多いと考えられると述べています。つまり弛緩性の時期や亜脱臼に痛みを伴う場合は装具が勧められています。

装具の工夫

次に装具です。現在では三角巾以外にも選択肢は広がっています。

例えばオットーボック社には肘関節を伸展した状態で保護ができる装具が提案されています。

オモニュークレサ

画像出典:ottobock. オモ ニューレクサ(5065)商品ページより

もし本人様や状況が許せばこのようなタイプを使用したいですね。肩甲帯のアライメント補正もベルトでできそうですし、なにより肘関節伸展位なので上腕二頭筋の痙性を助長しないのが嬉しいです。しかし装着が複雑そうなのがネックですかね。

機会がありましたら使用感をご報告しますね。

装具も日進月歩で新しいものができていますし、車いす周りの商品も様々な補助具がでていますので亜脱臼の方を担当される際は新しい物品がないか情報収集をしてみるといいと思います。

予防が大事

MRIを用いた比嘉ら(2001)の報告では19例の片麻痺患者のうち19例に腱板変性、18例に腱板断裂を伴ったとしています。

症例数は多くはありませんが全ての患者さんに肩の変性が見つかったのは驚きませんか?

もちろん脳卒中にかかりやす年齢は肩の変性が伴いやすい年齢と一致するという意見もありますが、重要なのは片麻痺の肩はとても痛み易い場所ということです。

一度関節内に絨毛様の変化や腱板断裂が起きてしまうとセラピストの介入でどうこうするのが難しくなります。

抑うつ状態になるほど肩の痛みは辛いものなのでしっかりと予防をしていきましょう。もし痛みがある場合は早めに主治医と相談して薬物療法で炎症の鎮静など対策を打っていきましょう。

効率よく知識を吸収するなら、良い本を読もう!

脳疾患のスタンダードな理学療法を押さえるにはオススメの本です。

セミナーとか無駄とは言わないのですが、体系的な知識を手に入れようと思ったら本で勉強するのが1番効率がいいです。

脳疾患に関連するオススメの本をまとめましたので、よかったら覗いてみてください。

参考文献、HP

原 寛美 (編), 吉尾 雅春 (編),脳卒中理学療法の理論と技術,メジカルビュー社,pp320-328,2013.

潮見泰藏(編),脳卒中に対する標準的理学療法介入 何を考え,どう進めるか?,文光堂,pp.308,2007.

比嘉丈矢 他,片麻痺患者肩関節のMRIを用いた検討,整形外科と災害外科50(4)pp.1035-1038,2001.

犬飼哲夫 他,脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について-,リハビリテーション医学29(7),pp.569-575,1992.

田中正一,脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼-X線評価と姿勢の及ぼす影響について, リハビリテーション医学26(3),pp.149-152,1989.

脳卒中ガイドライン2009,片麻痺側の肩に対するリハビリテーション

片麻痺相談室


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理学療法士

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